「わざとじゃないから謝らねぇよ」
わざとじゃないから謝らねぇよ
そんな事を言う人間を見た。
その時の状況を説明しましょう。
とある書店の中を男女が、女性が前、男性が後という状態で歩いてた。
棚を流すように見ながら歩く二人。
「あっ」
突然、女性が声を上げて立ち止まる。
平積みされた本に気になるものがあったらしい。
ところが、後ろの男性は女性の状態に気づかず……そのまま衝突する。その時、男性の足が女性の足を踏んでしまう。
男性は靴、女性はサンダルを履いていた。「また踏んだ。……今日で三回目だよ」
呆れた調子の女性に対して男性は無言。
「まずは『ゴメン』だろ」
女性の語気が強まった。
と、男性がすかさず言った。
「わざとじゃないから謝んねぇよ」
「はぁっ!?」声を上げた女性は驚いた表情で男性を見るが、男性は先程までと変わらない表情で女性を見詰め返す。
そのまま無言が続く。しばらくして、男性に背を向けて女性が歩き出す。
その体からは怒りが滲み出ているように見えた。そして、その後を男性は女性の後ろをついて歩き出す。
その表情は「やれやれ」といった感じだった。
正直、去り際の二人はかなりの温度差があるようだったのでそのまま尾行すれば、いずれ修羅場が見られるのではないか、という期待もありましたが断念しました。
世の中にいろんな人間がいるとはいえ、故意でないから悪くないと言ってのけた人を目にしたのは初めてでした。
それは兎も角、女性の方は足を踏んだ行為に対して怒っているようだから「わざとじゃない」という答えで怒りを静める事はできない、たぶん。
そもそも意識も無意識も主観であって、相手に伝える事はできてもその真偽はわからない。
双方に共通する客観は踏んで踏まれた足だけで……でもこういう事を考えると男性が謝るのは事態を治めるためになってしまう。
それは謝罪の心が篭もっていないという点で、無意識に謝る事と違いはない。
無意識的に謝る事と意識的に謝らない事は大差がないのだろうか。
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